◆ガンと仲良くする会    武者 宗一郎

 一風異色の会が昭和59年5月13日大阪八尾市で呱呱の声を挙げた。「ガンと縁を切る会」ならば納得できるが「仲良くする」とはフザケ巫山戯(ふざける)るなとお叱りを賜りそうな会名の会の会長に私が選ばれてしまった。 廿数名の会員すべて、ガンを克服したか、もしくは目下克服中の方々である。この私は昭和58年8月6日膀胱ガンを発病し、3ケ月足らずで全快した経験者組に属する。
 近代医療がガン治療の3大柱として重要中の方法は、すべてがガンを病敵であると見做し、これに対抗する姿勢のものばかりである。即ち、ガンはあくまで敵対されているかに見える。 曰ク、その三大主柱なるものは
 (1) 剔出手術による排除(早期に)
 (2) 放射線照射による細胞破壊(集中照射)
 (3) 薬剤の注入投与による殺戮(ミサイル)
この3ヶ条こそ、金科玉条であると心得ておられるようである。が、しかし、医師自身が発ガンした場合に、この玉条を破る者が多いと聞く。しかし、甲田光雄先生率いる、吾が「ガンと仲良くする会」のメンバーは、ガンを治す(実際には消失もしくは脱ガン)のに、上述の三玉条には従わない。しかし、大部分のメンバーは過去に於いて、その洗礼を十二分に受けた上、見離された者達ばかりである。
 吾が仲間が厳粛に守る鉄則は、甲田先生の指導を絶対的に信ずることである。換言すれば遺伝子中のDNAC(デオキシリボ核酸)の発するセントラルドクマに質し、「脱ガン」させること以って金殿玉楼となすのである。この道は断食―生菜食―小食という、極めてプリミティブ。しかも温故知新を地でゆく独自の方法なのであり、一切の医薬を用いない。
 即ち、ガン細胞というのは未分化のまま勝手にどんどん分裂し、正常な細胞のDNAのセントラルドクマに従わずに増殖する。この狂った細胞が異常増殖を止め、しかも一人前の分化成熟した元の正常細胞に戻り、改悛して自然に健全な本来の仕事を始める現象が所謂、「脱ガン」である。この現象は1969年、京大の市川康夫教授によって報告されたのである。
 実験は、ネズミの骨髄性白血病の細胞に、皮膚や骨の結合組織のもとになる繊維芽細胞の培養液を振り掛けてみたところ、人工的に脱ガン出来たという事実に基づいて証明された。即ち、培養液中の「なにか」によって健康なマクロファージ(貪食細胞)に「変身」し、元に戻ったのである。脱ガン作用は糖タン白のみでなく、インターフェロン、ビタミンD,デキサメジンなど、さまざまな物質も亦持ち合わせているが、断食―生菜食―小食によって同様に脱ガンさせるのが最も自然であり、動物達は全てこの方法によって万病を治しているのである。これが吾々の金殿玉楼なのである。
 近時、発ガンのメカニズムも次第に晴霧の境をゆく様相であるが、未だ先は杳い。たとえば、吾々は ガンの仕掛け人に当るイニシェィター(起始物質)が医薬品をはじめとする農薬その他の化学品や、食品添加物、化粧品、天然カビ毒などであることを既に知っている。更にガンになるためには、この変異細胞を前ガン細胞にするためのプロモーター(促進物質)が必用であり、それがタバコ、サッカリン、クロトン油、ニトロソァミン類など多数であることも知っている。ガンがここまで来るのに10〜20年を要するが、約1〜2gの臨床ガンがマニュフェスティション(顕在化)されて1〜2kgのガンに成るには若い人なら数ヶ月でこと足りる。
 さて、ガンの生因の主たるものは、目下染色体の相互転座であることが解明され、発ガンメカの重要部分がすべて遺伝子に端を発していることが明らかにされた以上、ガンはあくまで吾が身の内で起したミステイクであるのだ。
 ガンは本人がガンであることを自覚しておらぬ限り殆ど助かる見込みのない「心身症」なのである。一般にガンを宣告された患者の80%は衝撃 → 否認(不安と恐怖) → 怒り(自己への内攻攻撃)→ 取り引き(自己側面と) → 抑鬱(自沈と悲しみ) → 受容(諦観) → 終焉というお定まりのコースを経て死を迎える。しかし、残りの20%は吾々と同様、実存的転換を経て希望の世界に直行し、残された余命をフルに使い生きぬいて見せるという信念を持つようになる。彼等は世に尽くし人に尽くし、夢中になっているうちに、吾が身のガンを自己消滅して仕了うのである。ガンを憎まず辛抱強く諭してやる気になれれば末期ガンでない限り、仲良く共存できよう。


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